茉莉花 (まつりか) 

作者名  蒲原有明 (1875-1952)
作品名  茉莉花
制作年代  1907
収載書名  『有明集』
刊行年代  1908
 その他  
 
咽び嘆かふわが胸の曇り物憂き
紗の帳
(とばり)しなめきかゝげ、かゞやかに、
或日は映る君が面
(おも)、媚(こび)の野にさく
阿芙蓉の萎
(ぬ)え嬌(なま)めけるその匂ひ。

魂をも蕩
(た)らす私語(さゝめき)に誘(さそ)はれつゝも、
われはまた君を擁
(いだ)きて泣くなめり。
極祕
(ごくひ)の愁、夢のわな、――君が腕(かひな)に、
痛ましきわがたゞむきはとらはれぬ。

また或宵は君見えず、生絹
(すずし)の衣(きぬ)
衣ずれの音のさやさやすゞろかに
たゞ傳ふのみ、わが心この時裂けつ。

茉莉
(まつり)花の夜の一室(ま)の香のかげに
まじれる君が微笑
(ほゝゑみ)はわが身の痍(きず)
もとめ來て沁みて薫りぬ、貴
(あて)にしみらに。
 
 詠いこまれた花   ケシ(阿芙蓉)マツリカ(茉莉花)

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